ひよっこknitterのあみもの雑記
29
このあいだ、用事があって某所にでかけた。
約束の時間よりずいぶん早めに着いたので、時間までその辺をブラブラしていようと思ってアテも決めずに歩きだすと、まもなく、某激安衣料品店が目にとまったよね。
お店の名前は知っていたけど、実際に足を踏みいれたことはなかった。
それで、いい機会だから、ちょっと中をのぞいてみようかなって気になったのね。

お店の名前を、ここでは「Kねた」と伏せ字にしておく。これで地元の人間には十分通じるだろう。
でも地元以外の人には、「Kねた」なんて言われても、なんのこっちゃわからんよね。
一部地域限定でまったり営業している「Kねた」を、よりグローバルな視点からわかりやすくみんなに説明するにはどうしたらいいか、正直、わたしもいま頭をかかえてる。
でもがんばって、Kねたがどんな感じのお店か、これから説明してみるね。

まずはじめに、Kねたというお店を、「K子さん」という女子高生におきかえて考えてみてほしい。
K子さんは、市内の公立高校に通う17歳の女子高生で、おなじクラスの人気男子、湯煮九郎くん(仮名)にあこがれている。
湯煮くんは、頭がよくて、かっこよくて、誰にでも親切。
それにスポーツも得意で、子どもにもやさしくて、うさわによると家は超お金持ちだとか。
勉強もスポーツも女子力もこれと言ってパッとしない自分にコンプレックスを抱えているK子さんにとって、湯煮くんは雲のうえの存在だった。
でもそれでもいい、見ているだけで幸せなの・・・・・と、K子さんは思っていた。
クラスメイトの島むら子が、あやしい動きを見せるまでは。

「島むら子め・・・・・」
島むら子は、学校一のキラキラ女子だ。
うわさによると入学以来、あらゆるタイプの男子たちから周3のペースで告白されるほど、キラキラしまくっているらしい。
おそるべき、愛のなんでもござれ状態。
その島むら子が、どうやら湯煮九郎くんを狙っているらしい。
すきあらば、大きな瞳をうるませて、上目づかいで、小首をかしげて・・・・かわいい内股で・・・ミニスカートをヒラヒラさせて・・・手はペンギンみたいにピョコピョコふって!・・・湯煮くんのうしろを三歩さがってついて行こうとするのだ。

やめろぉっ、島むら子!私の湯煮くんに近づかないでっ!!
K子さんは胸のなかで叫んだよね。
湯煮くん、だまされないでっ!!
その女は、湯煮くんが思っているような子じゃないのよ。
島むら子はね、他校の人気者、鈍器ほう手くんと、すでに男女交際している仲なのっ!!

「あたし、知ってるんだから!」
・・・・・・でも、内気で恥ずかしがり屋のK子さんには、とても正面切って湯煮くんにそれを告げる勇気はなかった。
でもでも、島むら子の不純なキラキラぶりがもう目にあまるところまできちゃってたから、湯煮くんを守るためには自分が立ち上がるしかないって悟って、とうとうある日、島むら子のところへ直談判にいったんだ。
湯煮くんが風邪で早退したある日の昼休み、K子さんは、もてる勇気をふりしぼって島むら子の机の前に立った。
そして、ふるえる声で「こ、こ、これ以上、湯煮くんに近づかないで」って言ったよね。
友だちの阿部いる美とおしゃべりしていた島むら子は、何こいつ、ってかんじでジロリとK子さんをにらんだ。
それからけだるそうに髪をかき上げて言ったよ。
「っていうか、あんた、湯煮くんのなんなわけ?」
「わ、わたしはただ・・・島むら子さんが、旧長崎屋高校の鈍器ほう手くんとつきあってるって聞いて、それで──」
「私がだれとつき合おうが、あんたに関係なくない?」
「そ、それはそうだけど、でも・・・・は、は、ハレンチな不純異性交遊に、湯煮くんを巻きこむことだけは、やめてほしいの!」
「はは〜ん、わかった。この子、湯煮くんのことが好きなんだよ」
そういうと島むら子は、腰ぎんちゃくの阿部いる美と意味深な目配せをしてクスクス笑い合った。
K子さんはかわいそうに、耳までまっかになって、何も言えずにうつむいて立っていたよ。
島むら子はK子さんに向きなおると言った。
「あんたが何たくらんでるのか知らないけど、私のきもちは誰にもとめられない。いつかきっと、私のラブテックで湯煮くんの心をつかんでみせる。あんたも好きならそうすれば?もっとも、地味でマイナー、超ローカル展開のあんたと、キラキラ全国展開しちゃってるこの私とじゃ、さいしょっから勝負は見えてるけど!あーはっはっは!あーーはっはっはっ!!」

「・・・・・・・・・」
Kさんは唇をかみしめて自分の席にもどると、そのまま机につっぷした。そして、人知れず泣いたよ。
島むら子さんったら、ひどい。
あんな言い方、あんまりだわ。
ちょっとくらい自分がかわいくておしゃれで全国展開してるからって、なによ!
あの人って、いつもそう。ローカルな人間のきもちなんか考えてみたこともないのよ。
なーにが、「今日はいてるこのジーンズ、1470円♪」よ!
みんながみんな、そんなブランド物ばっかりはいてるわけじゃないんだからね。
ええ、そうよ、うちのジーンズは、サンキュープライスの399円よ。
ゴムウエストの、ギャザー仕様ジーンズよ!
それがおかしい?
すそもギャザーですぼめてサルエルっぽくはけるようにしてるのが、そんなにおかしいっていうの?!
ええっ、どうなのよ、島むら子!
答えてみなさいよっっ!!!

「・・・・・」「・・・・・」
・・・・・とまあ、だいたいこういう感じの話なんだけど、うまく伝わっただろうか。
これでK子さんこと「Kねた」のことが、おぼろげながらでも伝わってくれているとうれしい。
でも、たとえ全然伝わらなかったとしても、気にしないでほしい。
私自身、書いている途中で着地点を見失ってしまったし、自分でも何が言いたいのかよくわからなくなっていた。
とにかく。
そういう感じのKねたに入って、中の様子をのぞいてみたんだ。

(当時の様子を、詳細なスケッチで再現)
ざっと見まわしたかぎり、来ているお客さんの年齢層は幅広かった。
したは幼稚園ぐらいの子から、うえは6、70代の奥さままで、さまざま。
ヤング世代のきれいなお姉さんもいたよ。
あつかっている衣料品もレディースのみならず、キッズにメンズ、介護用品までいろいろある。
そっかぁ、Kねたって、こういう感じのお店かぁ・・・・・
そう胸につぶやいて店を出ようとしたそのときだった。
ふと、背後で交わされている会話が耳にはいった。
会話しているのは小学校3、4年生くらいの女の子と、その祖母らしい女性のふたり。
女の子がいろんな商品を手にとって「どう?」とおばあちゃんに見せているんだけど、おばあ様の反応はかんばしくない。
すこし考えた末、少女はべつの商品を手にとって「これは?」と見せた。
すると、それを見たおばあ様のテンションが急に上がった。
おばあ様はうわずった声で言ったよ。
「あら、チャンネル?!いいじゃないっ」

・・・・・そうなのだ。Kねた的時空のなかでは、チャンネルが、正解なのだ。
いまあえて、だれも持っていないチャンネルをさりげなく合わせてみるのが正解。
チャンネルではずしてみるのが、正解。
はずしすぎて戻れなくなったとしても、それもまた、正解。
私たちの知らない正解が、まだまだK子さんちにはたくさん眠っている気がする。
あなたの知らない正解。
それをこれから一緒にさがしに行こう。
K子さんと一緒にさがしに行こう。
長い道のりになるとしても。
約束の時間よりずいぶん早めに着いたので、時間までその辺をブラブラしていようと思ってアテも決めずに歩きだすと、まもなく、某激安衣料品店が目にとまったよね。
お店の名前は知っていたけど、実際に足を踏みいれたことはなかった。
それで、いい機会だから、ちょっと中をのぞいてみようかなって気になったのね。

お店の名前を、ここでは「Kねた」と伏せ字にしておく。これで地元の人間には十分通じるだろう。
でも地元以外の人には、「Kねた」なんて言われても、なんのこっちゃわからんよね。
一部地域限定でまったり営業している「Kねた」を、よりグローバルな視点からわかりやすくみんなに説明するにはどうしたらいいか、正直、わたしもいま頭をかかえてる。
でもがんばって、Kねたがどんな感じのお店か、これから説明してみるね。

まずはじめに、Kねたというお店を、「K子さん」という女子高生におきかえて考えてみてほしい。
K子さんは、市内の公立高校に通う17歳の女子高生で、おなじクラスの人気男子、湯煮九郎くん(仮名)にあこがれている。
湯煮くんは、頭がよくて、かっこよくて、誰にでも親切。
それにスポーツも得意で、子どもにもやさしくて、うさわによると家は超お金持ちだとか。
勉強もスポーツも女子力もこれと言ってパッとしない自分にコンプレックスを抱えているK子さんにとって、湯煮くんは雲のうえの存在だった。
でもそれでもいい、見ているだけで幸せなの・・・・・と、K子さんは思っていた。
クラスメイトの島むら子が、あやしい動きを見せるまでは。

「島むら子め・・・・・」
島むら子は、学校一のキラキラ女子だ。
うわさによると入学以来、あらゆるタイプの男子たちから周3のペースで告白されるほど、キラキラしまくっているらしい。
おそるべき、愛のなんでもござれ状態。
その島むら子が、どうやら湯煮九郎くんを狙っているらしい。
すきあらば、大きな瞳をうるませて、上目づかいで、小首をかしげて・・・・かわいい内股で・・・ミニスカートをヒラヒラさせて・・・手はペンギンみたいにピョコピョコふって!・・・湯煮くんのうしろを三歩さがってついて行こうとするのだ。

やめろぉっ、島むら子!私の湯煮くんに近づかないでっ!!
K子さんは胸のなかで叫んだよね。
湯煮くん、だまされないでっ!!
その女は、湯煮くんが思っているような子じゃないのよ。
島むら子はね、他校の人気者、鈍器ほう手くんと、すでに男女交際している仲なのっ!!

「あたし、知ってるんだから!」
・・・・・・でも、内気で恥ずかしがり屋のK子さんには、とても正面切って湯煮くんにそれを告げる勇気はなかった。
でもでも、島むら子の不純なキラキラぶりがもう目にあまるところまできちゃってたから、湯煮くんを守るためには自分が立ち上がるしかないって悟って、とうとうある日、島むら子のところへ直談判にいったんだ。
湯煮くんが風邪で早退したある日の昼休み、K子さんは、もてる勇気をふりしぼって島むら子の机の前に立った。
そして、ふるえる声で「こ、こ、これ以上、湯煮くんに近づかないで」って言ったよね。
友だちの阿部いる美とおしゃべりしていた島むら子は、何こいつ、ってかんじでジロリとK子さんをにらんだ。
それからけだるそうに髪をかき上げて言ったよ。
「っていうか、あんた、湯煮くんのなんなわけ?」
「わ、わたしはただ・・・島むら子さんが、旧長崎屋高校の鈍器ほう手くんとつきあってるって聞いて、それで──」
「私がだれとつき合おうが、あんたに関係なくない?」
「そ、それはそうだけど、でも・・・・は、は、ハレンチな不純異性交遊に、湯煮くんを巻きこむことだけは、やめてほしいの!」
「はは〜ん、わかった。この子、湯煮くんのことが好きなんだよ」
そういうと島むら子は、腰ぎんちゃくの阿部いる美と意味深な目配せをしてクスクス笑い合った。
K子さんはかわいそうに、耳までまっかになって、何も言えずにうつむいて立っていたよ。
島むら子はK子さんに向きなおると言った。
「あんたが何たくらんでるのか知らないけど、私のきもちは誰にもとめられない。いつかきっと、私のラブテックで湯煮くんの心をつかんでみせる。あんたも好きならそうすれば?もっとも、地味でマイナー、超ローカル展開のあんたと、キラキラ全国展開しちゃってるこの私とじゃ、さいしょっから勝負は見えてるけど!あーはっはっは!あーーはっはっはっ!!」

「・・・・・・・・・」
Kさんは唇をかみしめて自分の席にもどると、そのまま机につっぷした。そして、人知れず泣いたよ。
島むら子さんったら、ひどい。
あんな言い方、あんまりだわ。
ちょっとくらい自分がかわいくておしゃれで全国展開してるからって、なによ!
あの人って、いつもそう。ローカルな人間のきもちなんか考えてみたこともないのよ。
なーにが、「今日はいてるこのジーンズ、1470円♪」よ!
みんながみんな、そんなブランド物ばっかりはいてるわけじゃないんだからね。
ええ、そうよ、うちのジーンズは、サンキュープライスの399円よ。
ゴムウエストの、ギャザー仕様ジーンズよ!
それがおかしい?
すそもギャザーですぼめてサルエルっぽくはけるようにしてるのが、そんなにおかしいっていうの?!
ええっ、どうなのよ、島むら子!
答えてみなさいよっっ!!!

「・・・・・」「・・・・・」
・・・・・とまあ、だいたいこういう感じの話なんだけど、うまく伝わっただろうか。
これでK子さんこと「Kねた」のことが、おぼろげながらでも伝わってくれているとうれしい。
でも、たとえ全然伝わらなかったとしても、気にしないでほしい。
私自身、書いている途中で着地点を見失ってしまったし、自分でも何が言いたいのかよくわからなくなっていた。
とにかく。
そういう感じのKねたに入って、中の様子をのぞいてみたんだ。

(当時の様子を、詳細なスケッチで再現)
ざっと見まわしたかぎり、来ているお客さんの年齢層は幅広かった。
したは幼稚園ぐらいの子から、うえは6、70代の奥さままで、さまざま。
ヤング世代のきれいなお姉さんもいたよ。
あつかっている衣料品もレディースのみならず、キッズにメンズ、介護用品までいろいろある。
そっかぁ、Kねたって、こういう感じのお店かぁ・・・・・
そう胸につぶやいて店を出ようとしたそのときだった。
ふと、背後で交わされている会話が耳にはいった。
会話しているのは小学校3、4年生くらいの女の子と、その祖母らしい女性のふたり。
女の子がいろんな商品を手にとって「どう?」とおばあちゃんに見せているんだけど、おばあ様の反応はかんばしくない。
すこし考えた末、少女はべつの商品を手にとって「これは?」と見せた。
すると、それを見たおばあ様のテンションが急に上がった。
おばあ様はうわずった声で言ったよ。
「あら、チャンネル?!いいじゃないっ」

・・・・・そうなのだ。Kねた的時空のなかでは、チャンネルが、正解なのだ。
いまあえて、だれも持っていないチャンネルをさりげなく合わせてみるのが正解。
チャンネルではずしてみるのが、正解。
はずしすぎて戻れなくなったとしても、それもまた、正解。
私たちの知らない正解が、まだまだK子さんちにはたくさん眠っている気がする。
あなたの知らない正解。
それをこれから一緒にさがしに行こう。
K子さんと一緒にさがしに行こう。
長い道のりになるとしても。
01
たなにあった目ざまし時計が床に落ちてこわれた。
ずいぶん昔に買った時計で、目ざましとしてはもう使っていなかった。
だから、こわれてもべつに困らないや、と思っていた。
ところが、時間を知りたくなると無意識のうちに、時計のあった場所に目をむけてしまう。
反射的に、目でその時計をさがしてしまう。
失くしてはじめて、どれだけその時計に頼って生活していたかわかった。
ちいさな時計ひとつでも、その喪失を受けいれるまでには時間がかかる。
ましてや相手が生き物なら──
ましてや相手が、「本家しまねこ様」ことミュウだったら、その喪失を受けいれるには、もっと長い時間がかかる。
昨年の11月、ミュウは、20歳でその生涯をとじた。腎不全だった。
さいごは苦しむこともなく、眠るように旅立っていった。
でもいまだに、ミュウが亡くなったと本当には信じられない。
呼べば、ひょっこりカーテンのかげから現れるような気がしている。
押入れのどこかにかくれているだけで、お腹が空けばにゃあにゃあ鳴きながら出てくるような気がしている。
ミュウは、21年前のちょうどいま頃、山に、兄弟猫と一緒に捨てられていたところを拾われた。
当時、うちにはリリーという名前の3歳のメスの犬がいて、居間のとなりのテラスで暮らしていた。
夜、人間たちの夕飯がすむと、リリーは家の中にいれてもらえた。
居間のヒーターのまえが彼女の特等席で、専用のタオルを敷いてもらったそこにゴロリと寝転がってみんなになでてもらうのが、リリーのしあわせな1日のおわりの儀式だった。
そこへある日とつぜん、新入りがやってきた。
青い目をした、しましまの生き物がやってきて、わがもの顔で家族と暮らしはじめた。
リリーにとっては、晴天のへきれきだったかもしれない。
(あいつ、いったい何者?)

リリーにとって一番がまんできなかったのは、この「しましま」が、彼女の特等席で勝手にくつろぐことだった。
(そこはあたしの場所なんだから、どきなさいっ!!)
リリーはしましまにむかって吠えた。
ところがいくら吠えたてても、しましまは、まるい目をぱちくりさせてこちらを見るだけで、ちっとも話が通じない。
(おのれ、しましま)
(さっさとそこをどきなさい)
(そこはあたしの場所だし、それはあたしのタオルだし、どれもみんな、お母さんがあたしのためだけに用意してくれたものなんだかんね!!)
リリーはわんわん吠えながら、新入りを追いかけまわした。
ところがこの新入り、やたらとすばしっこくて、つかまらない。
やっと追いつめたと思うと、椅子のうえに飛びあがり、椅子からテーブル、テーブルから食器戸棚のてっぺんへと忍者みたいに飛びうつってしまう。
そして棚のてっぺんから「ばーか、ばーか」ってかんじでこちらを見下ろしてるんだった。
(お〜の〜れ〜、しましまぁ〜〜っ!!)
頭にきたリリーは夢中になって吠えたてていたけど、そうすると「そんなに騒ぐ人は帰りなさい」って叱られて、リリーだけがテラスに出されてしまうんだった。

テラスに出されても、リリーの気はおさまらない。
おのれ、しましま。
覚えてなさいよ。
暗いテラスを右に左に走りまわりながらブツブツ言っていると、ふと、頭上に気配を感じて顔をあげた。
すると目の前のガラスに、宿敵しましまのシルエットがくっきりと浮かびあがっている。
しましまは、ガラスごしにユラユラしっぽを揺らしながら、シルエットでもって語りかける。
「わたくしはおうちの中にいるけれど、あなたはお外?お気の毒にね。おほほほほ♪」
リリーはふたたび頭に血が上って、シルエットの映しだされたガラス戸に、猛烈ないきおいでアタックを開始するんだった。

ミュウは女王様だった。
気がつよくて、プライドが高くて、身体能力もばつぐんで。
リリーは箱入り娘だった。
仔犬のとき散歩中によその犬におそわれ、おしりを噛まれた。
以来、リリーは外の世界にたいして臆病になってしまい、そんなリリーには家族も過保護気味だった。
女王様と箱入り娘の折り合いはなかなかつかず、顔をあわせれば追いかけっこをはじめる日々がつづいた。
追いかけっこは、どちらかが息切れしてへばるまでつづいた。
先にへばるのは、たいがいリリーだった。
ハアハア言いながら舌をだしてその場に座りこみ、それからゴロリと寝ころがる。
それを見たミュウが「え、もうおわり?」って顔で立ちつくし、「ま、いいけど」ってかんじで自分もそのへんに寝ころがる。
2匹は、部屋のすみとすみにそっぽをむいた格好で寝ころがって、しばしの休戦状態に入っていたよ。
でもやがて、そんな関係にも変化がおとずれた。
そっぽをむいて寝ころがる2匹の距離が、ほんのすこし、縮まっていたんだ。
最初のころは、ゆうに3、4メートル離れていた2匹の距離が、いつのまにか2メートル・・・・1メートル・・・と縮まっていった。
ミュウがそばにいるとどうにも落ち着かなかったリリーが、いつしかミュウのそばでうたた寝するようになった。
ほんのちょっとなら、自分の特等席をミュウにもゆずってあげるようになった。

2匹の距離は、さいごは10センチのところまで縮まった。
いつか2匹が仲良く寄りそって眠る日もくるかもしれないと家族は期待した。
でも、そのまえに時がきてしまった。
年老いたリリーが、病にたおれた。

病魔の進行はくいとめられず、リリーは日に日に衰弱していった。
いよいよ足取りもおぼつかなくなったとき、家族で話しあって、リリーを家に入れることにした。
最期のときを、家のなかで、家族とむかえさせてあげたかった。
そのころには、リリーはもう見る影もなくやせてしまい、頭皮のしたに頭がい骨のかたちが浮きでて見えるほどだった。
それからリリーは歩けなくなり、立てなくなり、やがて自力で上体をおこすことも、寝返りをうつこともできなくなった。
さいごは水を飲む力もなくなってしまった。
リリーを家にいれようと決めたとき、正直、ミュウのことを心配してた。
いつもみたいにリリーをからかったり、ちょっかいを出したりして、リリーの体にさわるようなことがあればどうしようと思って。
でも、そうはならなかった。
ミュウにはみんなわかっていたみたい。
台所にこしらえたベッドにリリーがふせっているあいだ、ミュウはリリーにちょっかいなんて出さなかったばかりか、まるでリリーを見守るみたいに、ずっとそばに付き添って眠っていたんだ。
リリーの姿が一望できる食器戸棚のてっぺんにまるくなって、そこから動こうとしなかった。
毎晩、母のふとんにもぐりこんで寝るのが習慣だったのに、リリーが亡くなるその日まで、ミュウはずっとリリーと一緒にさむい台所で眠っていたそうだ。
ミュウは、やさしい猫だった。

リリーはいま、裏の柿の木のしたに眠っている。
墓標がわりに、水仙をうえた。
そこは、とくべつ日当たりのいい場所でもなんでもないのに、春になるとなぜか、リリーの水仙がまっさきに咲く。
ほかの水仙がまだかたいつぼみのうちから、リリーの水仙だけがぴかぴかに咲いている。
そしていまは、おなじ柿の木のしたにミュウも眠っている。
リリーと一緒なら、ミュウもさびしくないよね。
きっと天国でたのしくやっているだろう。
ずいぶん昔に買った時計で、目ざましとしてはもう使っていなかった。
だから、こわれてもべつに困らないや、と思っていた。
ところが、時間を知りたくなると無意識のうちに、時計のあった場所に目をむけてしまう。
反射的に、目でその時計をさがしてしまう。
失くしてはじめて、どれだけその時計に頼って生活していたかわかった。
ちいさな時計ひとつでも、その喪失を受けいれるまでには時間がかかる。
ましてや相手が生き物なら──
ましてや相手が、「本家しまねこ様」ことミュウだったら、その喪失を受けいれるには、もっと長い時間がかかる。
昨年の11月、ミュウは、20歳でその生涯をとじた。腎不全だった。
さいごは苦しむこともなく、眠るように旅立っていった。
でもいまだに、ミュウが亡くなったと本当には信じられない。
呼べば、ひょっこりカーテンのかげから現れるような気がしている。
押入れのどこかにかくれているだけで、お腹が空けばにゃあにゃあ鳴きながら出てくるような気がしている。
ミュウは、21年前のちょうどいま頃、山に、兄弟猫と一緒に捨てられていたところを拾われた。
当時、うちにはリリーという名前の3歳のメスの犬がいて、居間のとなりのテラスで暮らしていた。
夜、人間たちの夕飯がすむと、リリーは家の中にいれてもらえた。
居間のヒーターのまえが彼女の特等席で、専用のタオルを敷いてもらったそこにゴロリと寝転がってみんなになでてもらうのが、リリーのしあわせな1日のおわりの儀式だった。
そこへある日とつぜん、新入りがやってきた。
青い目をした、しましまの生き物がやってきて、わがもの顔で家族と暮らしはじめた。
リリーにとっては、晴天のへきれきだったかもしれない。
(あいつ、いったい何者?)

リリーにとって一番がまんできなかったのは、この「しましま」が、彼女の特等席で勝手にくつろぐことだった。
(そこはあたしの場所なんだから、どきなさいっ!!)
リリーはしましまにむかって吠えた。
ところがいくら吠えたてても、しましまは、まるい目をぱちくりさせてこちらを見るだけで、ちっとも話が通じない。
(おのれ、しましま)
(さっさとそこをどきなさい)
(そこはあたしの場所だし、それはあたしのタオルだし、どれもみんな、お母さんがあたしのためだけに用意してくれたものなんだかんね!!)
リリーはわんわん吠えながら、新入りを追いかけまわした。
ところがこの新入り、やたらとすばしっこくて、つかまらない。
やっと追いつめたと思うと、椅子のうえに飛びあがり、椅子からテーブル、テーブルから食器戸棚のてっぺんへと忍者みたいに飛びうつってしまう。
そして棚のてっぺんから「ばーか、ばーか」ってかんじでこちらを見下ろしてるんだった。
(お〜の〜れ〜、しましまぁ〜〜っ!!)
頭にきたリリーは夢中になって吠えたてていたけど、そうすると「そんなに騒ぐ人は帰りなさい」って叱られて、リリーだけがテラスに出されてしまうんだった。

テラスに出されても、リリーの気はおさまらない。
おのれ、しましま。
覚えてなさいよ。
暗いテラスを右に左に走りまわりながらブツブツ言っていると、ふと、頭上に気配を感じて顔をあげた。
すると目の前のガラスに、宿敵しましまのシルエットがくっきりと浮かびあがっている。
しましまは、ガラスごしにユラユラしっぽを揺らしながら、シルエットでもって語りかける。
「わたくしはおうちの中にいるけれど、あなたはお外?お気の毒にね。おほほほほ♪」
リリーはふたたび頭に血が上って、シルエットの映しだされたガラス戸に、猛烈ないきおいでアタックを開始するんだった。

ミュウは女王様だった。
気がつよくて、プライドが高くて、身体能力もばつぐんで。
リリーは箱入り娘だった。
仔犬のとき散歩中によその犬におそわれ、おしりを噛まれた。
以来、リリーは外の世界にたいして臆病になってしまい、そんなリリーには家族も過保護気味だった。
女王様と箱入り娘の折り合いはなかなかつかず、顔をあわせれば追いかけっこをはじめる日々がつづいた。
追いかけっこは、どちらかが息切れしてへばるまでつづいた。
先にへばるのは、たいがいリリーだった。
ハアハア言いながら舌をだしてその場に座りこみ、それからゴロリと寝ころがる。
それを見たミュウが「え、もうおわり?」って顔で立ちつくし、「ま、いいけど」ってかんじで自分もそのへんに寝ころがる。
2匹は、部屋のすみとすみにそっぽをむいた格好で寝ころがって、しばしの休戦状態に入っていたよ。
でもやがて、そんな関係にも変化がおとずれた。
そっぽをむいて寝ころがる2匹の距離が、ほんのすこし、縮まっていたんだ。
最初のころは、ゆうに3、4メートル離れていた2匹の距離が、いつのまにか2メートル・・・・1メートル・・・と縮まっていった。
ミュウがそばにいるとどうにも落ち着かなかったリリーが、いつしかミュウのそばでうたた寝するようになった。
ほんのちょっとなら、自分の特等席をミュウにもゆずってあげるようになった。

2匹の距離は、さいごは10センチのところまで縮まった。
いつか2匹が仲良く寄りそって眠る日もくるかもしれないと家族は期待した。
でも、そのまえに時がきてしまった。
年老いたリリーが、病にたおれた。

病魔の進行はくいとめられず、リリーは日に日に衰弱していった。
いよいよ足取りもおぼつかなくなったとき、家族で話しあって、リリーを家に入れることにした。
最期のときを、家のなかで、家族とむかえさせてあげたかった。
そのころには、リリーはもう見る影もなくやせてしまい、頭皮のしたに頭がい骨のかたちが浮きでて見えるほどだった。
それからリリーは歩けなくなり、立てなくなり、やがて自力で上体をおこすことも、寝返りをうつこともできなくなった。
さいごは水を飲む力もなくなってしまった。
リリーを家にいれようと決めたとき、正直、ミュウのことを心配してた。
いつもみたいにリリーをからかったり、ちょっかいを出したりして、リリーの体にさわるようなことがあればどうしようと思って。
でも、そうはならなかった。
ミュウにはみんなわかっていたみたい。
台所にこしらえたベッドにリリーがふせっているあいだ、ミュウはリリーにちょっかいなんて出さなかったばかりか、まるでリリーを見守るみたいに、ずっとそばに付き添って眠っていたんだ。
リリーの姿が一望できる食器戸棚のてっぺんにまるくなって、そこから動こうとしなかった。
毎晩、母のふとんにもぐりこんで寝るのが習慣だったのに、リリーが亡くなるその日まで、ミュウはずっとリリーと一緒にさむい台所で眠っていたそうだ。
ミュウは、やさしい猫だった。

リリーはいま、裏の柿の木のしたに眠っている。
墓標がわりに、水仙をうえた。
そこは、とくべつ日当たりのいい場所でもなんでもないのに、春になるとなぜか、リリーの水仙がまっさきに咲く。
ほかの水仙がまだかたいつぼみのうちから、リリーの水仙だけがぴかぴかに咲いている。
そしていまは、おなじ柿の木のしたにミュウも眠っている。
リリーと一緒なら、ミュウもさびしくないよね。
きっと天国でたのしくやっているだろう。
24
はじめて、ドクロ柄のカーディガンをはおって階下におりていった朝、母が言った。
「あら、いいじゃない、そのしゃれこうべ」
「・・・・そうかな」
「そうよ。外にも着てったら?そのしゃれこうべ」
「・・・・・・」
辞書によると、しゃれこうべとは「さらされ頭(こうべ)」の意味らしい。
風雨にさらされて白骨化した頭がい骨のことを、「しゃれこうべ」とか「されこうべ」、「しゃりこうべ」「どくろ」「野ざらし」などというんだって。
上記のラインナップの中からあえて選ぶとすれば、私なら、「どくろ」をえらぶ。
しゃれこうべでもされこうべでもなく、どくろ、とそれを呼ぶ。
もし道をあるいていて、道端に、風雨にさらされて白骨化した頭がい骨をみつけたら、あ、どくろだ、っていうだろうし、警察に届けるときも「どくろを拾いました」っていう。
もし店で、風雨にさらされて白骨化した頭がい骨を模した柄の下着を見つけたら、あ、どくろのパンツ、っていうだろうし、まちがっても、「しゃれこうべパンティー」とか「野ざらしブリーフ」なんて呼び方はしない。
できることなら母にも、ともに「どくろ」の道を歩んでほしかった。
私の着ているそれを、しゃれこうべではなく、ドクロのカーディガンと呼んでほしかった。
話の発端は、ひと月前の2月下旬までさかのぼる。
急にあったか上着をつくりたくなって、パンドラに行ったんだ。
素材は、フリースかボアでさがすつもりだった。
時期的に、もう春物商品に切りかわっちゃってるかなって懸念はあった。
冬物素材はあまり置いてないかもしれないって。
いってみると、店内は、こちらが思っていた以上に春だったよ。
売り場には春風が吹いて、さくら吹雪も舞っていた。
春風とさくら吹雪のむこうに大々的な「入園バッグ特集」が組まれており、われらがフリースは売り場のすみっこもすみ、となりの紳士服売り場になかば押しつけられかねない勢いで、冬物セールワゴンにのっけられ放置されていた。
ワゴン内にのこっている色は、わずか、3、4色。
手にとってみるも、どれも用尺に足りない。
身頃とそでとフードをそれぞれ別の色でつくれば、ワゴン内にのこるフリースで間に合っただろう。
でも、そこまでカラフルなカーディガンを着る勇気はまだもてず、その日はなにも買わずに帰った。
後日、気をとりなおして、マブチに討ち入り。
するとこちらの冬物セールワゴンには、かろうじて2種類、着丈分のそろったフリースがのこっていた。
私は両者を手にもって見くらべたよ。
右手にもったフリースには、青地にヘリコプターの絵がびっしり描かれていた。
左手にもったそれには、黒地にしゃれこうべ・・・・じゃなかった、どくろの絵がびっしり描かれていた。
ヘリコプターと、どくろ。
あなたなら、どちらを選ぶ?
私は、どくろを選んだ。
青は好きな色だけど、ヘリコプター柄は・・・・ヘリコプター柄は・・・・・
似あう似あわないの問題以前に、似あったところでどうしていいかわからない、それがいまの私にとってのヘリコプター柄だ。
ごめんね、ヘリコプター。
あなたにふさわしい相手はほかにいる。
消去法でえらばれ、わが家にやってきたどくろフリースは、その後、なんとかカーディガンのかたちになった。

(「FEMALE 」2012 SPRING号 64のカーディガン)
いろんなことがはじめてで、いろんなところを失敗してる。
でも、作るのはとても楽しかった。
出来不出来はともかく、形にできただけで、いまは幸せ。感動。
初のカーディガン完成から、1か月。
毎朝毎晩、パジャマの上にはおって、特価品どくろ、大活躍。
猫の爪とぎとしても、2重に、活躍。
先日の朝、いつものようにどくろをはおって階下におりていくと、母が言った。
「あら、しゃれこうべさん、今朝は早いね」
・・・・ついに、カーディガンではなく、着ている本人そのものが「しゃれこうべさん」になってしまい、私としてもなんだか後戻りできないところまできてしまったような気がしている。
でも。それでも。
もし、ヘリコプターのカーディガンを製作していたら「ヘリコプターさん」と呼ばれていたはずだし、それよりはまだ、しゃれこうべさんのほうが、若干ましなはず。
きっと、そう。
絶対、そう。
お願いだからそうだと言って。

しゃれこうべさんはこれから、春物の布でも見にいく予定だ。
しゃれこうべさんは、春が待ちきれない。
衣替えの日が待ちきれない。
「あら、いいじゃない、そのしゃれこうべ」
「・・・・そうかな」
「そうよ。外にも着てったら?そのしゃれこうべ」
「・・・・・・」
辞書によると、しゃれこうべとは「さらされ頭(こうべ)」の意味らしい。
風雨にさらされて白骨化した頭がい骨のことを、「しゃれこうべ」とか「されこうべ」、「しゃりこうべ」「どくろ」「野ざらし」などというんだって。
上記のラインナップの中からあえて選ぶとすれば、私なら、「どくろ」をえらぶ。
しゃれこうべでもされこうべでもなく、どくろ、とそれを呼ぶ。
もし道をあるいていて、道端に、風雨にさらされて白骨化した頭がい骨をみつけたら、あ、どくろだ、っていうだろうし、警察に届けるときも「どくろを拾いました」っていう。
もし店で、風雨にさらされて白骨化した頭がい骨を模した柄の下着を見つけたら、あ、どくろのパンツ、っていうだろうし、まちがっても、「しゃれこうべパンティー」とか「野ざらしブリーフ」なんて呼び方はしない。
できることなら母にも、ともに「どくろ」の道を歩んでほしかった。
私の着ているそれを、しゃれこうべではなく、ドクロのカーディガンと呼んでほしかった。
話の発端は、ひと月前の2月下旬までさかのぼる。
急にあったか上着をつくりたくなって、パンドラに行ったんだ。
素材は、フリースかボアでさがすつもりだった。
時期的に、もう春物商品に切りかわっちゃってるかなって懸念はあった。
冬物素材はあまり置いてないかもしれないって。
いってみると、店内は、こちらが思っていた以上に春だったよ。
売り場には春風が吹いて、さくら吹雪も舞っていた。
春風とさくら吹雪のむこうに大々的な「入園バッグ特集」が組まれており、われらがフリースは売り場のすみっこもすみ、となりの紳士服売り場になかば押しつけられかねない勢いで、冬物セールワゴンにのっけられ放置されていた。
ワゴン内にのこっている色は、わずか、3、4色。
手にとってみるも、どれも用尺に足りない。
身頃とそでとフードをそれぞれ別の色でつくれば、ワゴン内にのこるフリースで間に合っただろう。
でも、そこまでカラフルなカーディガンを着る勇気はまだもてず、その日はなにも買わずに帰った。
後日、気をとりなおして、マブチに討ち入り。
するとこちらの冬物セールワゴンには、かろうじて2種類、着丈分のそろったフリースがのこっていた。
私は両者を手にもって見くらべたよ。
右手にもったフリースには、青地にヘリコプターの絵がびっしり描かれていた。
左手にもったそれには、黒地にしゃれこうべ・・・・じゃなかった、どくろの絵がびっしり描かれていた。
ヘリコプターと、どくろ。
あなたなら、どちらを選ぶ?
私は、どくろを選んだ。
青は好きな色だけど、ヘリコプター柄は・・・・ヘリコプター柄は・・・・・
似あう似あわないの問題以前に、似あったところでどうしていいかわからない、それがいまの私にとってのヘリコプター柄だ。
ごめんね、ヘリコプター。
あなたにふさわしい相手はほかにいる。
消去法でえらばれ、わが家にやってきたどくろフリースは、その後、なんとかカーディガンのかたちになった。

(「FEMALE 」2012 SPRING号 64のカーディガン)
いろんなことがはじめてで、いろんなところを失敗してる。
でも、作るのはとても楽しかった。
出来不出来はともかく、形にできただけで、いまは幸せ。感動。
初のカーディガン完成から、1か月。
毎朝毎晩、パジャマの上にはおって、特価品どくろ、大活躍。
猫の爪とぎとしても、2重に、活躍。
先日の朝、いつものようにどくろをはおって階下におりていくと、母が言った。
「あら、しゃれこうべさん、今朝は早いね」
・・・・ついに、カーディガンではなく、着ている本人そのものが「しゃれこうべさん」になってしまい、私としてもなんだか後戻りできないところまできてしまったような気がしている。
でも。それでも。
もし、ヘリコプターのカーディガンを製作していたら「ヘリコプターさん」と呼ばれていたはずだし、それよりはまだ、しゃれこうべさんのほうが、若干ましなはず。
きっと、そう。
絶対、そう。
お願いだからそうだと言って。

しゃれこうべさんはこれから、春物の布でも見にいく予定だ。
しゃれこうべさんは、春が待ちきれない。
衣替えの日が待ちきれない。
15
ミステリー小説が読みたくなって、先月、ヘレン・マクロイの『暗い鏡の中に』を買って読んだ。
ドッペルゲンガーを題材にした幻想ミステリで、暗い冬の午後、黒猫をひざにのっけて読むには最適の一冊だった。
窓のそとに広がるダークな冬景色と作品世界とがいい感じにマッチして、怪奇な雰囲気も2割増。
ひさしぶりに小説を読んで楽しかったので、読後ふと、読書感想文的なものでも書いてみようかなと机にむかってみるも、びっくりするくらい、なにも書くことが頭にうかばなかった。
心の中はこんなにまっくろなのに、頭だけ、まっしろ。
かんがえてみれば昔から、読書感想文を書くのは苦手だった。
なにか立派なこと書かなきゃと思って、りきみすぎるのかな。
読書感想文だけじゃなく、感想全般が苦手だ。
映画の感想、音楽の感想、食事の感想、どっか行ったときの感想・・・・どれも、あまりまともなことが言えたためしがない。
唯一、たい焼きにかんする感想だけはいくらでも言えるけど、この際、そんなこと、なんの自慢にもならない。
そんなに日々、感想のない暮らしをおくっているんだろうか。
そんなに感想のない人間だろうか、自分は。
カンソウするのはスネだけか。
そんな人生、無味乾燥。
そろそろ本気で、感想がいえる人間になりたい。
今年はちょっとがんばって、読んだ本や観た映画の感想くらいは・・・・・ちょっとずつブログに書いてく練習をしてみよう。
読書感想文は今回はあきらめて、かわりに身近なところから、感想をひとつ。
1月に完成させて(放置して)いた「Big Herringbone Cowl (リンクはこちら)」の感想。
写真をひと目見て、この模様、どうやって編むんだろうと気になった。
モデルさんが巻いている写真も個人的にツボだった。
こんなふうに、ゆったり、たっぷり巻いてみたいと、夢は広がるばかり。
編みかたはシンプルだけどなかなか進まなくて、毎晩、気長にちょっとずつがんばった。
手加減もはじめのうちうまくつかめなくて、やけにきつくなったり、逆にゆるくなりすぎたりと、その辺、すこし苦労した。
あと、ゲージの合う糸が見つからなくてね。
でもまあ、目数を調整すれば長さ調節もなんとかなるさと踏み、自分なりに目数を変更してトライ。
そして、やっと完成したんだけど・・・・・・


「・・・・・みじけー・・・(ゆったり、たっぷり巻く夢はどこに・・・・?)」
スチーム当てればすこしは伸びるかと期待したんだけどね。
期待どおりにいかないのが、人生だよね。巻物だよね。
セ・ラ・ヴィ。
奇特なだれかに押しつけることにする。
ドッペルゲンガーを題材にした幻想ミステリで、暗い冬の午後、黒猫をひざにのっけて読むには最適の一冊だった。
窓のそとに広がるダークな冬景色と作品世界とがいい感じにマッチして、怪奇な雰囲気も2割増。
ひさしぶりに小説を読んで楽しかったので、読後ふと、読書感想文的なものでも書いてみようかなと机にむかってみるも、びっくりするくらい、なにも書くことが頭にうかばなかった。
心の中はこんなにまっくろなのに、頭だけ、まっしろ。
かんがえてみれば昔から、読書感想文を書くのは苦手だった。
なにか立派なこと書かなきゃと思って、りきみすぎるのかな。
読書感想文だけじゃなく、感想全般が苦手だ。
映画の感想、音楽の感想、食事の感想、どっか行ったときの感想・・・・どれも、あまりまともなことが言えたためしがない。
唯一、たい焼きにかんする感想だけはいくらでも言えるけど、この際、そんなこと、なんの自慢にもならない。
そんなに日々、感想のない暮らしをおくっているんだろうか。
そんなに感想のない人間だろうか、自分は。
カンソウするのはスネだけか。
そんな人生、無味乾燥。
そろそろ本気で、感想がいえる人間になりたい。
今年はちょっとがんばって、読んだ本や観た映画の感想くらいは・・・・・ちょっとずつブログに書いてく練習をしてみよう。
読書感想文は今回はあきらめて、かわりに身近なところから、感想をひとつ。
1月に完成させて(放置して)いた「Big Herringbone Cowl (リンクはこちら)」の感想。
写真をひと目見て、この模様、どうやって編むんだろうと気になった。
モデルさんが巻いている写真も個人的にツボだった。
こんなふうに、ゆったり、たっぷり巻いてみたいと、夢は広がるばかり。
編みかたはシンプルだけどなかなか進まなくて、毎晩、気長にちょっとずつがんばった。
手加減もはじめのうちうまくつかめなくて、やけにきつくなったり、逆にゆるくなりすぎたりと、その辺、すこし苦労した。
あと、ゲージの合う糸が見つからなくてね。
でもまあ、目数を調整すれば長さ調節もなんとかなるさと踏み、自分なりに目数を変更してトライ。
そして、やっと完成したんだけど・・・・・・


「・・・・・みじけー・・・(ゆったり、たっぷり巻く夢はどこに・・・・?)」
スチーム当てればすこしは伸びるかと期待したんだけどね。
期待どおりにいかないのが、人生だよね。巻物だよね。
セ・ラ・ヴィ。
奇特なだれかに押しつけることにする。
10
このあいだの日曜日、母が美容室にいったら、すごく混んでいたそうだ。
卒業式シーズンだからこの時期混むのはわかるけど、美容師さんの話だと、理由は他にもあるみたい。
もうすぐ春休みだもんね。
休みともなれば、子どもたちがずっと家にいて、女性陣は毎日ごはんを3食作らないといけなくなる。
子どもや孫のごはん作りで忙しくなって、とうぶん美容院にもいけなくなるからって、いまのこの時期、前倒しでお店を訪れるお客さんが増えてるんだそうだ。
そういう私も、そろそろ、美容院にいかないと。
いまお世話になっているお店は、去年の夏にみつけて通いはじめた。
あたらしいお店に行って、最初に雑誌を手渡されるときって、いったいどんなメンツが差し出されるのかちょっとドキドキしない?
ふだん読んでる雑誌を、そのままズバリ渡された記憶ってない。
それはつまり、自己イメージと他人のくだす客観的判断とがずれてるってことなのかもしれないね。
いまのお店ではじめの日に手渡された雑誌は、井川遥を現在の地位に押しあげた(?)某誌だった。
やだ、私ってそういうイメージ?veryうれしい。きゃはきゃは♪・・・・などとはしゃぎかけるも、まあ、お店のほうでもいろいろ気を遣っているんだよね・・・・と気がついて、自分を見失わずには、すんだ。
その後、お店は毎回very気を遣ってくれて、井川遥さまが表紙の某誌を手渡される日々がつづいたよ。
それが先日、大雪がふった日の午後に、すべてが変わってしまった。

(美容院におめかしして出かけた、の図)
私が行ったとき、お店はまだそれほど混んでいなかった。
席に案内され、アシスタントさんにタオルやケープでぐるぐる巻きにされて待つこと数分。
やがて雑誌を手にもどってきたアシスタントさんは、「失礼します」とささやいて雑誌を一冊鏡台におくと、逃げるように去っていった。
私は雑誌をとりあげた。
いつものように井川遥さまがやさしくほほえみかけてくるかと思いきや、その日の某誌は趣向をかえて、奇抜な路線でせめていた。
ファッション誌なのに、ラーメン。
湯気のあがるおいしそうなラーメンの写真が表紙を埋めつくしてる。
どまんなかに、ぶっとい黒字で、「この冬、ラーメンを食べつくす!!」みたいな文句がおどっていた。
私は裏をみた。
それからまた、表紙をみた。
さいごに深呼吸した。
それはタウン情報誌だった。
ラーメン特集号の。
担当の美容師さんがあらわれたので、私は雑誌を鏡台にもどして、今回は軽めのショートボブにしたいって話しはじめた。ずいぶん伸びてもっさりしてきてたから、とにかく軽くしたかったの。
担当のAさん(仮名)は鏡のむこうで考えこんだ。
こちらの後頭部を見つめつつ、むしろ長さはいまのまま、カットで軽さを出すようにしたほうが髪質的にはあつかいやすいはず、とアドバイスしてくれた。
それに髪の色をもう一段あかるくすれば、さらに軽さをだせるって。
カットしてもらってるあいだ、私はつとめて、タウン情報誌のことは忘れることにした。
きっと何かのまちがいだよ。
Aさんとのおしゃべりで気をまぎらしつつ、同時に、店内の様子もそれとなくうかがったり。
ほかにきているお客さんは、50代の女性がひとり、60代の奥さまがひとり、20代の女の子がふたりに、私のとなりの席で美しすぎる美容師さんと大いに盛りあがっている20代半ばの男子、で全員。
そっか、ここはいろんな年代の人たちに愛されているお店なんだね・・・・・って、いやいやいやいや!
だったら私んとこに井川遥がきてなかったらおかしいだろ。
ほかに井川遥な世代、いないだろ。
目のまえのラーメン特集、どう考えたって、となりの男子用だろう!!

カットがおわり、Aさんは、アシスタントのBさんとCさん(どちらも仮名)にカラー剤の指示をだして行ってしまった。
誰もとりかえに来てくれないので、しかたなくラーメン特集をとりあげて読みだしたよ。
読みながら、思った。
わたし、なにか、した?
このあいだ来たときと、どこか変った?
それとも知らないうちに時代のほうが変わってしまったの?
時代と井川遥がこちらを追いこしてしまったの?
時の流れについていけない東京タワー世代は、タウン情報誌片手に立ちつくすしかないのか。
「ラーメン、好きなんですか?」
とつじょ、Bさんが話しかけてきた。
あいまいな笑みをうかべながら言葉をさがしていると、ふたりはそろってたたみかけてきた。
「おいしいお店、どこか知ってますか?」
「よく食べにいくんですか?」
「何味が好きですか?」
「地元でよく行くお店とかあるんですか?」
「そういえば、チャーシュー麺って・・・・」
わずかに残されていた35歳のプライドに、食らいついてくる、ハイエナ。
ふたりは、私とラーメン特集に食らいついて、はなそうとしなかった。
・・・・・みんなが甘やかすから、私、自分のこと、出羽の国の井川遥ぐらいに思ってたよ。very思ってたよ。
それがなんですか。
ここへきて、こういうハシゴの外しかたですか。
でも、もう、いいよ。
泣き言はよそう。
むしろ、ありがとう。
愛のムチを、ありがとう。
おかげで自分を見失わずにすんだ。
これからは、等身大の自分を大切に生きていく。
うん、ラーメン、おいしいよねっ!!
学生時代はとんこつ派だったけど、30すぎたら、断然、塩派になりました♪
たまにチャーシュー麺が食べたくなるときがあるけど、そのまま食べたら胃にもたれて苦しくなっちゃうから、そんなときは家でチャーシューのかわりにトリ肉入れて作りなおして、「これ、大人の食べかた、トレビア〜ン♪」って言いながら食べるようにしてる。

やっと、私にもわかった。
ショートボブにしたいって言ったとき、Aさんが、セミロングのまま長さをのこそうって提案したのも、そのほうがラーメン食べるとき髪をまとめやすいから、なんだね。
ショートボブくらいの長さがいちばん顔にかかって邪魔なんだよね。
髪の色を一段あかるくしたおかげで、やさしい色あいの塩スープとも、見た目、バランスがとれるようになりました。
これからは、ラーメンとの調和を第一に考えて、ヘアスタイルをえらんでいく。
ラーメンと調和しながら、自分らしさを模索していく。
カラー剤の浸透を待つあいだ、べつのアシスタントさんがアイスティーを運んできてくれた。
冷えたグラスを鏡台におきながら、放心状態でラーメン特集を読みなおす私の耳元に「(雑誌)あたらしいの、お持ちしますか?」とささやくので、ここ数年だしたことがないくらい本気の声で、「はい!」と答えた冬の午後だった。
卒業式シーズンだからこの時期混むのはわかるけど、美容師さんの話だと、理由は他にもあるみたい。
もうすぐ春休みだもんね。
休みともなれば、子どもたちがずっと家にいて、女性陣は毎日ごはんを3食作らないといけなくなる。
子どもや孫のごはん作りで忙しくなって、とうぶん美容院にもいけなくなるからって、いまのこの時期、前倒しでお店を訪れるお客さんが増えてるんだそうだ。
そういう私も、そろそろ、美容院にいかないと。
いまお世話になっているお店は、去年の夏にみつけて通いはじめた。
あたらしいお店に行って、最初に雑誌を手渡されるときって、いったいどんなメンツが差し出されるのかちょっとドキドキしない?
ふだん読んでる雑誌を、そのままズバリ渡された記憶ってない。
それはつまり、自己イメージと他人のくだす客観的判断とがずれてるってことなのかもしれないね。
いまのお店ではじめの日に手渡された雑誌は、井川遥を現在の地位に押しあげた(?)某誌だった。
やだ、私ってそういうイメージ?veryうれしい。きゃはきゃは♪・・・・などとはしゃぎかけるも、まあ、お店のほうでもいろいろ気を遣っているんだよね・・・・と気がついて、自分を見失わずには、すんだ。
その後、お店は毎回very気を遣ってくれて、井川遥さまが表紙の某誌を手渡される日々がつづいたよ。
それが先日、大雪がふった日の午後に、すべてが変わってしまった。

(美容院におめかしして出かけた、の図)
私が行ったとき、お店はまだそれほど混んでいなかった。
席に案内され、アシスタントさんにタオルやケープでぐるぐる巻きにされて待つこと数分。
やがて雑誌を手にもどってきたアシスタントさんは、「失礼します」とささやいて雑誌を一冊鏡台におくと、逃げるように去っていった。
私は雑誌をとりあげた。
いつものように井川遥さまがやさしくほほえみかけてくるかと思いきや、その日の某誌は趣向をかえて、奇抜な路線でせめていた。
ファッション誌なのに、ラーメン。
湯気のあがるおいしそうなラーメンの写真が表紙を埋めつくしてる。
どまんなかに、ぶっとい黒字で、「この冬、ラーメンを食べつくす!!」みたいな文句がおどっていた。
私は裏をみた。
それからまた、表紙をみた。
さいごに深呼吸した。
それはタウン情報誌だった。
ラーメン特集号の。
担当の美容師さんがあらわれたので、私は雑誌を鏡台にもどして、今回は軽めのショートボブにしたいって話しはじめた。ずいぶん伸びてもっさりしてきてたから、とにかく軽くしたかったの。
担当のAさん(仮名)は鏡のむこうで考えこんだ。
こちらの後頭部を見つめつつ、むしろ長さはいまのまま、カットで軽さを出すようにしたほうが髪質的にはあつかいやすいはず、とアドバイスしてくれた。
それに髪の色をもう一段あかるくすれば、さらに軽さをだせるって。
カットしてもらってるあいだ、私はつとめて、タウン情報誌のことは忘れることにした。
きっと何かのまちがいだよ。
Aさんとのおしゃべりで気をまぎらしつつ、同時に、店内の様子もそれとなくうかがったり。
ほかにきているお客さんは、50代の女性がひとり、60代の奥さまがひとり、20代の女の子がふたりに、私のとなりの席で美しすぎる美容師さんと大いに盛りあがっている20代半ばの男子、で全員。
そっか、ここはいろんな年代の人たちに愛されているお店なんだね・・・・・って、いやいやいやいや!
だったら私んとこに井川遥がきてなかったらおかしいだろ。
ほかに井川遥な世代、いないだろ。
目のまえのラーメン特集、どう考えたって、となりの男子用だろう!!

カットがおわり、Aさんは、アシスタントのBさんとCさん(どちらも仮名)にカラー剤の指示をだして行ってしまった。
誰もとりかえに来てくれないので、しかたなくラーメン特集をとりあげて読みだしたよ。
読みながら、思った。
わたし、なにか、した?
このあいだ来たときと、どこか変った?
それとも知らないうちに時代のほうが変わってしまったの?
時代と井川遥がこちらを追いこしてしまったの?
時の流れについていけない東京タワー世代は、タウン情報誌片手に立ちつくすしかないのか。
「ラーメン、好きなんですか?」
とつじょ、Bさんが話しかけてきた。
あいまいな笑みをうかべながら言葉をさがしていると、ふたりはそろってたたみかけてきた。
「おいしいお店、どこか知ってますか?」
「よく食べにいくんですか?」
「何味が好きですか?」
「地元でよく行くお店とかあるんですか?」
「そういえば、チャーシュー麺って・・・・」
わずかに残されていた35歳のプライドに、食らいついてくる、ハイエナ。
ふたりは、私とラーメン特集に食らいついて、はなそうとしなかった。
・・・・・みんなが甘やかすから、私、自分のこと、出羽の国の井川遥ぐらいに思ってたよ。very思ってたよ。
それがなんですか。
ここへきて、こういうハシゴの外しかたですか。
でも、もう、いいよ。
泣き言はよそう。
むしろ、ありがとう。
愛のムチを、ありがとう。
おかげで自分を見失わずにすんだ。
これからは、等身大の自分を大切に生きていく。
うん、ラーメン、おいしいよねっ!!
学生時代はとんこつ派だったけど、30すぎたら、断然、塩派になりました♪
たまにチャーシュー麺が食べたくなるときがあるけど、そのまま食べたら胃にもたれて苦しくなっちゃうから、そんなときは家でチャーシューのかわりにトリ肉入れて作りなおして、「これ、大人の食べかた、トレビア〜ン♪」って言いながら食べるようにしてる。

やっと、私にもわかった。
ショートボブにしたいって言ったとき、Aさんが、セミロングのまま長さをのこそうって提案したのも、そのほうがラーメン食べるとき髪をまとめやすいから、なんだね。
ショートボブくらいの長さがいちばん顔にかかって邪魔なんだよね。
髪の色を一段あかるくしたおかげで、やさしい色あいの塩スープとも、見た目、バランスがとれるようになりました。
これからは、ラーメンとの調和を第一に考えて、ヘアスタイルをえらんでいく。
ラーメンと調和しながら、自分らしさを模索していく。
カラー剤の浸透を待つあいだ、べつのアシスタントさんがアイスティーを運んできてくれた。
冷えたグラスを鏡台におきながら、放心状態でラーメン特集を読みなおす私の耳元に「(雑誌)あたらしいの、お持ちしますか?」とささやくので、ここ数年だしたことがないくらい本気の声で、「はい!」と答えた冬の午後だった。

